2014年10月31日

障害児施設へお邪魔して

なかなか書く時間がとれないまま
今月も終わろうとしています。
最近、歯科の事、書けてませんもんねぇ。
いろいろネタはあるのだが・・・

そこで今日体験してきたことを書きましょう。
10月の予定でも書きましたが、
30日は歯科医師会役員としてのお仕事で、
障害児施設へ訪問して、
食事風景や歯の状態を見させてもらい、
施設スタッフや御家庭へ
フィードバック出来るような
歯科医師目線からのアドバイスをすること
を目的とした活動をしていました。

ちなみに
今日は3才〜6才の小学校入学前の
可愛いお子さまたち。

高齢者施設で言うならデイケアやデイサービスに
あたる時間帯なんですが、
こういうところでは何と言うのでしょうか?
様々な市の活動について、勉強不足な状態です。

ちなみに障害児の歯科治療の経験なら
豊富とは言えないまでも、それなりにはあります。
親御さんと共に通院できる子供であれば、
大抵の治療は可能でしょう。

どちらかと言うと大変苦戦を強いられるのは、
成人になっていらっしゃる重度障害がある方で、
意思疏通が難しいけれど、1人で通院される場合、
問診による病状悪化の経緯が計れず、
場合によってはレントゲンもとれず、
どんな薬を飲んでいるかもわからず、
かといって、
軽い処置で変化をみることも意思疏通ができないと困難、
極端な処置にすれば症状は改善できるが、
できるだけ元の状況に近い改善をさせたいという理想や、
将来的に長持ちしやすい状態の構築を目指す治療とは
かけ離れてしまう可能性も出てきてしまいます。
結構難しいんです。

たまに人に話すと、笑い話扱いになってしまいますが、
成人の方でパーキンソンを患い
常に一定のリズムで頭を左右に振る方の治療をしたときです。
強引にその頭を固定しようとすると、
悲鳴のような叫びをあげ、手足までバタつかせますし、
首振りの力も強烈で支える男の手ですら難しい。
その首振りのリズムと範囲に合わせて、
私自身の肩から手までを動かしつつ、
視界はぶれないように、ミラーも回転させ、
自分の体幹はいっさい動かさない。
使う道具はみんなと同じタービンです。
曲芸じみてますが、
武道と楽器の経験と歯科医師としての経験、
そしてその患者さんを不安に感じさせないことに配慮した
首振り行為の容認によって、
そのリズムが狂うことが最低限で済んだ事による幸運
もあったと言えるでしょうか。
ちなみに1回の治療で済むはずもない多量虫歯。
同じ状況のまま何回もやったわけです。
油断できないのは、パッと見同じことが起きているからといって
同じとは言えないということ。
1本1本の歯、どこをやるかによって、私の体勢や角度は異なり、
患者さんだって、その時の心境や来院までに何をしていたかによって、
首の振り方も変化します。
端で聞けば、苦労話や笑い話でいいでしょうけど、
こっちとしては、現状把握、あらゆる事態の想定と対応、
予期せぬ行動に出た場合の反射的防衛策、最善の治療法、
等を考えた上で、
患部の歯への集中、首振りのリズムと範囲への警戒、
手足などの予期せぬ行動に出るサインがないかのチェック、
などリアルタイムで感じていなければならないので、
たぶん他の人が見たこともないオーラを出しまくっているかも?

人差し指がピクッと動くだけで、
警戒体制をとれるようにしなければいけない訳です。
そんなに苦労するなら大学病院に送れば・・・
ある意味全うな意見ですが、
人員があり拘束具がある所で、
心因性の恐怖感をあおってでも、歯の治療が優先されるべき、
というのは最終手段だと思っています。

よく「くいしばり」のことを書きますが
障害者ほど顕著に強烈なくいしばり跡があります。
それだけ歯のダメージが大きく、
肉体的にも精神的にも影響を受けていると想像できます。
病気のせいで歯に甚大な被害が及ぼされ、
その歯のせいで、病気を更に悪化させたり、
他の症状が現れるきっかけとなります。

あっぷるいーと吉祥寺歯科に、
噛み合わせ、くいしばり、顎関節症、ドライマウス、小児矯正、
などを主訴として御来院された方はわかるでしょうが、
御自分の気付かない癖が歯に影響を及ぼしている状況が、
理解はできても、簡単には改善できないでしょう。
それだけ身体に染み込んだ悪癖を取るのは大変です。

健常者でも、一朝一夕にはできないことを、
話の理解もできず、異常なくらいのくいしばりを
日常茶飯事に行う障害者に求めることは難しく、
100ある力を、
健常者なら70、50、目指すは0、だとするなら、
重度の障害者は99でも98でもいいから下げてあげる
ことを目指すと言えることも多いです。


だからこそ、悪癖が重篤化し、抜けなくなる「前」の、
子供の時期から、ちゃんとアプローチしていきたい。

食べることにも不安がある状況を改善し、
更にその先まで・・・
とても1回でできることではないんですが、
できることはしたいわけです。

現時点では、
この小学校入学前の時期までの最低限のフォローアップと、
義務教育が過ぎて、成人と呼ばれる前後の時期以降への、
フォローしかできていません。
そういう子供たちを受け入れる学校の中へは、
歯科医師会としてフォローする状況にはないので、
大丈夫なのか、手伝う必要はないのかなどを、
市から確認してほしいとお願いしている最中。

また、こういう施設へも
もっと積極的に参加できた方が良いのだが・・・
親御さんや行政や、様々なことを1つ1つクリアして
いかなければならないので、まだ小さな一歩ですが。

特に今回お邪魔した施設は、
理事長先生からして尊敬できる人物だと思いました。
田舎のおばあちゃんを思い出すような温かさと、
子供たちの将来を考えた校長先生のような触れ合いと、
こういうお仕事ですから、どんなに経験を積み重ねようと
毎日が一歩一歩手探りでしょうけど、
それを真摯に受け止めて何をしてあげられるだろうかと
行動している意欲を感じました。


社会福祉の一環であり、
その中でのたったヒトコマの経験ではありますが、
もどかしくて歯がゆい。
こういう理事長や各スタッフのもとで、
歯科医師として、
もっと積極的に参加して、一緒に子供たちを見守れないかなぁ。



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2014年07月31日

シリーズH・歯を守る・日常生活に関わる

さぁ、ながらくかかったシリーズ「歯を守る」も
これで一区切りとしましょう。
とはいえ、日頃、聞くこともないだろうなぁということに
特化させて書いたことなので、
歯を守るためのホンの一側面でしかありません。

歯科医師にとって、
どう考え、状況をどう判断し、
どう治療することがベストか。

・・・単なる削って埋めるだけの治療の中に、
どれほどの考慮が入っているのか、
・・・歯石や着色から、
どんなことまで見極めようとしているのか、
・・・今の状況を維持すべきか、改善すべきか。

どう考えるかは歯科医師次第な事もありますし、
患者さんの状態によっても変わります。

散々書きますが、保険に予防の意識はありませんし、
予防することも保険を用いては認められていません。
だからこそ予防を意識した治療は浸透していません。
たとえば保険の虫歯治療は、
その「感染した1本の歯」単位で診るものでしかありません。
その1本がなぜ虫歯になったのか、
普通にその状況だけを治すことが正しいのか、
そこまでの判断は歯科医師に求められていないのです。
(虫歯だから治す・・・だけです。)
そのため個々の歯科医師がどう取り組むか次第で、
今後の繰り返しやすさが異なるかもしれません。
(基本的に健診や顎関節症・歯周病・ドライマウスなどでなければ
 全体を診ようということもあまりないのが現実でしょう。)

患者さんも自身の歯をどう考えるかで
受診の状態が変わります。

絶対ここまで治療したいけど、
来週、内臓の病気の手術がある・・・
なんてことがあれば、ベストの治療よりも、
その入院中に安定していられるような治療を
選択しなければなりません。
ベターよりも、Not bad が良かったりもします。
ケースバイケースで目指すべきことが代わります。

近年では、全身麻酔下の内臓手術において、
「歯周病はリスクとなりえる」という考えのもと、
手術前に歯科治療をするようにと伝える外科医もいます。

手術のための入院までに、全てが終わらせられるなら
それがベストですが、
何年放置したの?と聞きたくなるような人ほど、
期間がない状態で来ることも・・・。
(外科に言われてから1ヶ月程度余裕があったはずなのに、
 入院1週間前で来られても全部は終わらない・・・なんて
 パターンも結構ある。
 そんなときは、最悪なものだけ何とかします。)


妊婦さんなどは、
ツワリによる口内環境のダメージもあれば、
ホルモンバランスの変調もきたしやすい。
出産後、場合によって2〜3年は、
通院できなくなることもしばしば。
だから先に徹底的に治しておいたほうが良い人もいれば、
治さなくても平気だろうといえる人もいます。・・・が、
平気だったはずなのに、
3年後にボロボロになってしまった人もまれにいます。

その人のリスクが、出産前後で変わってしまうこともあるので、
妊娠前や妊娠中の安定期に、
口腔内検査とともに歯科医師にアドバイスをもらっておき、
できるだけ来院できない期間も
それを意識できていることが望ましいでしょう。
勿論、出産後すぐでも通院できれば、そのほうが良いです。

武蔵野市では妊婦健診も行っています。
基本は、歯をちょこっと見て終わりの簡易検査ですが、
クリニックでの受診となるため、ウチでは、
写真を撮って、どういう状況か、今後のリスクは、
妊娠・出産後の注意は、出産後の子供への配慮、
などのお話までしています。
そのため人によって3〜40分ぐらいかけることもしばしばあり、
予約から20分以上も遅れて来られると、
別の時間や曜日に変更してもらわざるをえませんが・・・、
たいていそういう人は、結局キャンセルになります。


今年はオリンピックもあり、
高齢者であっても深夜まで起きていることがありました。
おかげでドライマウスが治らない治らない・・・。
やっとオリンピックが終わったかと思えば、
今度はパラリンピックを見ているという。

体力や免疫力の衰えた方が、
睡眠不足・食事の偏りをはじめとした、
生活環境の悪化までも上乗せされれば、
どうやっても治しようがありません。
そうなれば、その期間はそれ以上悪化させない環境づくりをし、
普通の日常生活に戻ってから、治ってくる力が出るのを待ちます。


他にもイロイロあるのですが、
ここに挙げた、これら3つのケースに共通するのが、
「自身の抱えるリスクを理解していない」人ほど、
「環境の変化で悪化しやすい状態」になってます。

だからこそ、「歯を守る」ための最大の敵が、
「自分に対しての無頓着」といえるかもしれません。

どんな治療をしようと、繰り返す。
治療だけじゃ治りきってくれないような、
身体の状態に左右されるレベルの、
「健康状態へあと1歩」が足りない。
その1歩は、自身で作り出す体内環境です。

よく食べ、よく身体を動かし、よく眠る。
そんなことも「歯を守る」事に繋がりますし、
病院でどうこう出来るレベルの話ではありません。

歯を守るためには、ぜひ、御自愛ください。



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2014年05月29日

シリーズG・歯を守る・エルゴノミクス活用で食いしばり予防をしよう

だいぶ新シリーズを書き始めてから時間がかかりましたので、
ちょっと変わった切り口で、最後の歯を失う要因である
「外傷」を書き足しておきましょう。


人間工学・・・
アメリカでは、ヒューマンファクター
ヨーロッパでは、エルゴノミクスといわれます。

人間が可能な限り自然な動きや状態で使えるように
物や環境を設計する学問であり、
事故やミスの発生を
限りなく少なくさせるための研究でもあります。


ここ数年で、この「エルゴノミクス」という文字を
目にしたことがある方はどれぐらいいるでしょうか?

家電量販店のPCコーナーの端っこ。
キーボードやマウスのコーナーで見かけることがあります。
「腱鞘炎対策に!」という一文が付属されて・・・。

腱鞘炎も炎症の一種です。
炎症は繰り返すほどに
健全組織を変形させ続けてしまうことがあります。
手や手首の変形などは、この結果で起こることも多い。

そしてその原因が、
人工物(キーボードやマウス)の形状にあるのだから
いかに負担をかけなくて済むかを研究するのも大切になってきます。


食いしばり、歯ぎしり、ドライマウス。
これらが疑わしく、かつ、
仕事やプライベートで、PCと向かい合う時間が長い人ほど、
ぜひこういうグッズに取り替えてください。

特にマウスは是非!


座っている時、特に女性は、
太ももの上で手を重ねる姿勢にすると行儀良く見えます。

本来なら背筋を伸ばしアゴを引くような、
全身の筋肉を正しく引き締めて座るものですが、
近年では、全身の筋肉が弛緩したままで、
「名残として」手を前で組む格好だけが
残っているようなものでしょう。

・・・これが猫背になりやすい姿勢であり、
この半端に行儀良い姿勢が癖になっている人ほど、
食いしばり傾向にあります。

全身の筋肉が弛緩し、手のひらを下にして前で組む、
だから肩が前方に引っ張られ、背中が丸まり、
下アゴが前に出て、食いしばっているのだろうな・・・
という患者さんを多く見ています。

人体の構造上、
立っている時は・・・手のひらが前。
座っている時は・・・手のひらが上。
であることが自然です。

身体の中央で、手のひらが下に向かっている座り姿勢は、
肩も前方に入り込み、猫背になりやすくなります。
ましてや、前傾姿勢で仕事をするほどに、
背筋を伸ばそうとはしなくなるでしょう。

ピアノやキーボード(楽器もパソコンも)も同じ脅威があります。
特にパソコンのブラインドタッチができる人はなおさらでしょう。
(ただピアノの場合は88鍵ぶんの横幅があり
 高音低音を弾き分けることが多い分、
 胸を張って弾くことも多いので、パソコンよりはマシですが、
 やはりプロを目指している人などは練習時間が多いぶん
 リスクは増えてしまっています。)

私のように基本2本指でしかキーボードを打てない人に比べ、
ブラインドタッチできる方は、手首が内側に入り込みますし、
そのサイズ的に左右の手が近づきすぎてます。
 
そこでエルゴノミクスのPCキーボード。
ハの字に開いた形で手首を傷めにくくする。
・・・もっとも、
肩や肩甲骨の位置を気にしてくれていなければ
手のひらが下に向かうので、姿勢は崩れやすいから注意ですが、
一般的なキーボードよりはぜんぜんおすすめです。


ただ、ウチに来られた患者さんに聞いてみると、
大半の方が「マウス」を持ちっぱなしにしているといいます。
こっちのほうが姿勢を悪化させやすいのではないだろうか?
というのが私の見解。

特にマウスは右手だけで使うことがほとんどでしょうから、
左右バランスも崩れやすい。

そういう対策ほど大切なんです。
ジョグステッィクのような形をしたもの、
ペン型・指につけるもの、、、
様々な特異形態をしたマウスが売っています。
ぜひ変えることをおすすめします。

手のひらは、下より横、横より上、のほうが姿勢を崩さない!

とはいえ安ければ1000円ほどで買えるマウスが、
4000〜6000円台ほどしてしまうし、
会社の備品だから取り替えるのも困難という人も多い。

長くその仕事をされるのであれば、
職業病ともいうべき、食いしばりによる噛み合わせの変化が
様々な悪行をしてしまうのですが・・・。

そういう方は、
・こまめにマウスから手を離す。
・マウス常設位置を変える。
・マウス操作位置を変える。
など、今日からでもできることを
工夫してもらうことからはじめましょうね。


単純な食いしばりだけでなく、
歪な姿勢で食いしばる事も、
咬合性外傷の原因となります。

噛むことで発生する外傷だから、「咬合性外傷」。
逆に、そのような外傷の原因となる噛み合わせを
「外傷性咬合」といいます。

もともと10代で綺麗な歯並びをしていたとしても、
自分では認識していない悪い癖で、
歪に歯が削れ、(外傷性咬合)
その状態で噛むことでもっと悪化させる(咬合性外傷)。
・・・そんな人も結構いるので、気をつけましょう。

もっともほとんどの人が自覚もないことですけど・・・

悪い姿勢から、崩れた噛み合わせへ・・・
そんな悪循環が続く限り、歯のトラブルは起き続けます。
悪癖を自覚できたとしても、長い習慣であるほど
簡単には治せません。
道具を活用することで、間違った習慣を治せるなら
ぜひそういう工夫を考えてみてください。


カラフルあっぷるいーと3.JPG



posted by あっぷるいーと いんちょう at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 全身に関わる歯科の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする