2013年10月13日

シリーズ・歯を残すには・A骨の中の感染

前回まったく本題が進まなかった感染の話の続きです。


まずは1人目。
このレントゲンを見て下さい。

11.jpg

歯根の先端を包む骨が黒くなっているでしょう。

レントゲンは、骨は白く、空洞は黒く映ります。
(ちなみに銀歯なども白く映ります。)

本来白くなくてはいけない骨のあるべき個所が
黒く映ってしまう理由には、
 @ウミなどで骨が溶けてなくなった場合か、
 A炎症が起きて骨がスカスカにされている場合か、
 B腫瘍などがあるか、
という3大要因が大半を占めます。

骨を溶かし空洞を作るモノ・・・それが膿(ウミ)です。
(厳密にはもっと種類がありますが、ほとんどがウミです)
ウチのホームページ上で、
実物のウミの袋の写真がアップしてあります。

ちなみに、この話をするにはイイ写真があるんですが
ネット上で探し出したものなので、無断転載できないので、
院内だけでしか使えません。


この膿が及ぼす悪影響は、
骨(歯槽骨)だけではありません。

歯根にも悪影響が及んでいます。

実はそれが、歯を残す時の大問題なんです。

上のレントゲンは、3年ほど前に撮影したものです。
大半の場合、レントゲンがこの状態で、
歯の動揺(揺れてグラグラ動く)があるようなら、
みなさん、すぐ抜かれちゃうでしょう?

それを、何とか1年でも長く残そう。
と、治療し続けた結果が、
約3年半は、歯としての機能をさせ続けられたのです。

そして、もう限界を超え過ぎたため抜いた歯がこの写真。

1.jpg

ここで注目してほしいのは、歯根の色。
(銀歯以外のところが全部歯根です。)

先端の方が黄色く、ちょっと肥大化しています。
茶色みがかった歯根の表面には、
部分的にクリーム色っぽい
ザラついているようなものも見えます。

それでは、詳しく解説してみましょう。


茶色みがかった歯根は・・・
歯髄(歯の神経)を取ってからの年月が長いから。

本来、歯根は白っぽいクリーム色が多い。
(個人差はあるけれど)

それが歯髄(神経と血管が豊富なところ)を
取ることで、栄養が送られてこなくなる。
それで年数が経過すると濃くなる。

実際に歯髄を取ったからといって
歯には問題ないといわれるのだが、
30年後・50年後と考えたら、
健康状態を保つために、残したいものです。

しかし、
感染した歯髄は、自覚症状の有無に関係なく
取り去らなければならない。

網目のように張りめぐった歯髄の、
どこに細菌が繁殖しているか
わかったもんじゃないからです。
繁殖した菌だけを消し去ることは不可能。
痛みなく悪化している人は多いんです。

網目状に張りめぐった神経通り穴。
どこかで細菌が繁殖すれば、
歯や骨が内側から崩壊されていきます。

だからできるだけ、神経を取らなくて済む、
前段階(神経には及ばないレベルのうちに)で
治療を受けるべきですし、
神経を取る必要があると判断された場合、
何度かしっかりとした神経を取り去る治療が
完遂されるまで通院しましょう。


続いて、
歯根に付着したザラついたクリーム色っぽいものは、
歯石です。

この人は、銀歯ギリギリまでハグキがあり、
そこから歯石取りの器具(スケーラー)をいれると
歯根の先端まで触れていました。

できるだけ細かく歯石を取るのですが、
見えないところ、触る角度が自由にいかない所、
歯根の間や、曲がっている内側など、
どうしても深すぎる位置に出来た歯石は
取り残してしまうといわれます。

熟達した専門医が行った結果でも、
ハグキの奥深くにできた歯石を取る場合、
歯周ポケットの深さ
3mmまでの取り残し:17%
5mmまでの取り残し:61%
5mm以上の取り残し:89%
というデータがあるんです。

そのため、完璧な歯の維持を求めるなら、
歯石を取る日帰り手術が必要になりますし、
早めに定期的に歯石を取ることが大切です。

この歯の場合は、
10mm以上の深いポケット。
前回、歯石を取ってから1ヶ月ほど経過していますが、
取り残した場所を足場として、新たに歯石が増えた
と考えていいと思われます。

本来ならば、とっくに手術の適応だったのですが、
本人の希望で、
今のまま駄目になるまで粘れればイイ
というので、現状維持をメインに
メンテナンスをしてきた歯です。

歯石も、一般的に4mm以下の歯周ポケットで
維持できないと、取り残しが増えてしまうといわれます。
早めに、定期的に取ることをおすすめします。


次に、
先端の方が黄色く、ちょっと肥大化しているところ。
これは硬化セメント質。
細菌の汚染に負けまいと、生態防御反応を起こした結果、
本来は薄いセメント質が、肥大化したもの。

神経を取った穴から、歯槽骨の中のウミを洗い流し、
徹底的に洗浄して、密封できたことで、
歯根の抵抗力が増した結果です。

これはあっても問題ありません。
どちらかというと、維持をするための治療が
ちゃんと機能していたことを証明してくれるものです。

人間の回復力はすごいものですね。
本来の形態を変形させてまで、
細菌に負けまいと抵抗するのですから。


この歯ではないのですが、
こういうレントゲン状態なのに、
定期的の来てくれない人の場合、
逆に、歯根のセメント質が腐ってしまっている
パターンが多くみられます。
ひどい時は、歯根も大きく溶けてなくなっている
ものもあります。
(永久歯の萌出に伴い、
 乳歯の歯根が短く溶かされている状態のように、
 ウミにより感染で溶かされるので、
 もっとゴツゴツでボロボロになります。)

基本的には歯の神経をとり、そこから先の歯槽骨に
アプローチして、ウミを溶かし出す治療をするのですが、
セメント質が腐ってしまった場合は、
その治療効果があまりありません。

手術するか、歯を抜くかしか対処のしようが無いでしょう。

実際に、虫歯を悪化させて、抜くしかない状態の歯は、
セメント質が腐っているものが、多いです。

ほっといていなくなる細菌はいません。

手術は、汚染部位の除去が確実に出来やすく、
歯根端切除術という感染した歯根も摘出し、
ときに骨を移植・補填することもします。


感染の治療は、
 ・ その汚染域を綺麗にすること、
 ・ 再感染させない状態をつくること、
の2大要素が最も重要になります。

しかし、
お尻の穴より細菌が多い口腔内。
環境の変化が著しく。
毎日・毎食ダメージを受ける歯。
という場所での感染であるため、
2大要素を確保することは困難です。

早期発見・早期治療が必要といわれる理由は、
2大要素が確保しやすい状態での治療が
望ましいからです。


ちなみにこの歯は、下の写真のように、
ハグキの中の歯根に虫歯ができ、
悪化し続けたために、
ハグキの炎症が続くようになり
抜かなければならなかった
というのが結末です。

1111.jpg

本来なら、
ハグキを開き、歯根の歯石取りやウミの切除
という手術と同時に
虫歯治療を施さなければいけなかった状態でした。

残念ながら、ハグキの中(下)に
できた虫歯をそのまま治療することはできません。

基本的にハグキの中(下)で
虫歯が繁殖することはないのですが、
このように歯槽骨が減少し、
ハグキだけで歯を支えているような状態では
ハグキの中(下)で虫歯ができてしまうこともあります。


できるだけ早期に、治すべき時期に治療しましょう。
でなければ、維持させるために行う治療は、
それなりに大々的なものとなります。


カラフルあっぷるいーと3.JPG




posted by あっぷるいーと いんちょう at 17:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 歯・虫歯に類する話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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