イギリスで82歳の総入れ歯の男性。歯がはえてきた?
2010年10月31日の「らばQ」というサイトで気になるニュースを発見。
ジョン・ギブリンさん(82歳)は甘いものが大好きで、若いころにお菓子を食べすぎて20代の内に全ての歯が抜け落ちてしまう。
それからずっと「入れ歯」生活。
およそ50年経ったある日、入れ歯に違和感を感じ痛みも伴ったため、歯科医を訪ねてレントゲンで確認してみると、なんと門歯(前歯)であることが判明。
80歳を過ぎて「歯がはえてきた!」
・・・もしこの記事を読んで、「私もいつか歯がはえてくるかも?」と期待した方がいたらゴメンなさい。
もしも「抜き損じ」でないならば、おそらくこれは、【過剰歯】というものでしょう。
過剰歯の発生頻度は約3%で、30〜40人に1人の頻度で見られます。
過剰歯は女性よりも男性に多く、また、そのほとんどが上の前歯部にできます。
しかし、女性や臼歯部に過剰歯が出現することもあります。
(親知らずのさらに奥にはえるものもあります・・・実際に抜いたことがありますから。)
過剰歯は普通の歯と違い、きれいに生えてくることはあまりなく、ほとんどの場合は骨の中に埋まったままの状態か、歯茎から頭だけが出たような状態になります。
過剰歯の形は、正常に近いものから退化傾向により不完全な形を示すものまでさまざま。
基本的に過剰歯は抜歯します。
過剰歯のできる原因は、はっきりしていません。
人間が進化する過程で徐々に失われてしまった歯が突然再び現れた結果であるという説。
遺伝的要素、外傷によって形成初期の歯胚が分割してしまった結果という説。
さまざまな説があげられています。
もっとも82歳で過剰歯ができた? なんてとても珍しいことです。
もし定期的に歯科医院に通われていたのなら、レントゲンなどの記録があるでしょう。
どうはえてきたのかがわかるでしょうから、ぜひ見てみたいものです。
ただ、イギリスの医療制度を日本と同じと考えることはできません。
自費しか行わないプライベートという仕組みの歯科医院では、治療の質もよく、予約がすぐに取れますが、治療費が全額自己負担となるので、とてつもない金額の治療費を請求されることも多いといいます。
日本の保険制度のようなNHSという仕組みでも、歯科の場合、治療費の8割程度を支払うのだそうですし、その登録にも半年以上、登録患者数が多い場合には、受け入れを拒まれます。
治療予約をしても2週間〜数カ月〜数年以上かかることもザラだといいます。そのうえで、腕も態度も悪いと悪評判なのだそうです。
イギリスでは、歯医者での治療があてにならないため、自分でペンチで歯を抜く人がかなりの数でいるという調査結果もあるそうです。
(日本で開業されている歯科医師で、外国の方を多く受け入れている人の話を聞いたことがありますが、「自国の保険制度や自費制度で治療を受けるよりも、日本の自費治療を受けたほうが良い」と言われる外国人のほうが圧倒的に多いのだそうです。)
もしこの82歳男性が、自分でペンチで歯を抜いていたとしたら・・・?
・・・抜き損じで、歯が途中で折れ(破折歯)、残った根っこ(歯根)が何年も経ってから出てくるってことは結構多く見られます。
「この82歳の男性は、一本の前歯だけでは入れ歯と干渉してしまうため、取り除くことになっており、新しい前歯が何もない歯茎の真ん中に生えたことから、恥ずかしいと感じているようです。」
「新しい前歯」という記事表現が正しければ、過剰歯の可能性が高く、そうでないなら、抜き損じの破折歯の可能性が高い。
それらの仮説が否定できたのなら、自然に「新生された歯」という大発見かもしれません。
・・・もっともそんなことがあれば、もっとビッグニュースとして、少なくとも歯科業界はもっと騒いでいるでしょう。
歯科の再生医療研究は、どん詰まり状態・・・なかなか進展せず、手を引いた大学もかなりあるのですから、このニュースが自然に「新生された歯」であれば、研究対象として放置するはずがないでしょう。
歯がはえたことで、
「家族は2度目の子供時代が来たのではと、ギブリンさんをからかっている」という部分では、
・・・日本人は見た目よりも若く見えることを良しとしていますが、
多くの諸外国では、「若く見える」という評価=「侮辱している」と受け取られます。
年齢通りに「歳を重ねている」ことを良しとする文化において、乳歯から永久歯にはえ変わるころまで若返った?・・・という表現をされることは、侮蔑に近い扱いなのかもしれません。
だからこそ「恥ずかしい」と感じているのでしょう。
様々な意味で、世界観の違いを考えさせられるニュースだなぁ!と感じます。