2017年05月27日

オーラルフレイル嚥下編

オーラルフレイル「嚥下」編
と題してお届けします。

口をくちゃくちゃ・モグモグ。
ベロをべろべろ。
唇を突き出したりひっこめたり。
ずーっと繰り返している高齢者を見たことがありますか?

口部ジスキネジア(ジスキネジー)という症状です。
意識して行っている行動ではないので、
意識的に止めることもできません。

原因不明のもの
飲んでいる人も多い薬剤の副作用
(向精神薬・抗うつ薬・降圧剤・抗パーキンソン病薬・抗ヒスタミン薬など)
脳梗塞・パーキンソン病・舞踏病・肝性脳症などの神経疾患の合併症
入れ歯の不具合・歯の欠損・顎位の低下など歯が悪いことで起こるもの
様々ですので、治すことも難しい。
原因と思われる疾患の処置を行ったり、休薬をお願いしたり、
運動にかかわる神経系の作用を抑制する薬を用いたり(歯医者ではできません)
原因が歯であれば適切な処置で治すこともできるのですが
一度you tubeなどにもあるので動画で見てほしいのですが
こんな異常に大きく動き回る舌に対応できる総入れ歯なんて
インプラントを用いて固定するタイプの入れ歯しかできません
といいたくなるような状態の人も珍しくないのです。
最もインプラントを入れることも怖いですが。

前回ブログの例えば認知症などと診断されたら
早めに歯科も受診しようというお話を無視され続けた結果、
入れ歯も使わずに丸飲み状態で生活を続け
もう入れ歯を入れられない状態の口になってしまったという
一例としてもみられます。

総入れ歯を入れることをあきらめると、
歯がなくても食べられるものを選ぶか
点滴・経管栄養で栄養を送るしかありません。

前々回ブログの食事形態の写真のような食事がギリギリ。
それすらも飲込みは危険と判断せざるを得ないことも。

できることなら治したいけれど、
状況的に無理。
本人も嫌がる。
意思の疎通も難しい。
家族や施設職員の協力も得難い。
・・・などなどとなったら歯科医師にできることは
歯がなくても飲み込める状態を
安全な範囲に調整してあげることのみ。

それが嚥下音の聴診であったり
食事姿勢のリクライニング化であったり
食事形態の変更やとろみ付けであったり
するわけです。

食形態をドロドロにしたとしても
口から食べられる方が前回述べたように
胃腸の働きもあるため免疫力が出てきます。
嚥下(飲込み)ができるうちは
口から食べさせたいです。
(嚥下が危険な状態では経管栄養のほうが安全になります)

そこで嚥下のメカニズム的に機能が落ちるとは?
を考えていきましょう。
言葉で語るには難しいので「嚥下のメカニズム」とかで
検索してもらうと絵や動画がいっぱい出てきます。
気になる方はそちらも参考に。
また神経系に関する話は難しくなるので除外しますが、
人体は何かしらの神経に関連していますので
神経が傷ついたり病気になったりすると
そこに関連した動きができなくなります。

食べるためには
(1)先行期
食物を見て認識することから始まります。
無意識で食べ方を判断したり唾液分泌を促します。
→認知症もある高齢者だと寝てしまうことも良くあります。
声かけやスプーンなどで刺激し、
食物を口の中に入れる介助も必要です。

(2)準備期
咀嚼して唾液と混ぜ飲み込みやすい形状(食塊)にします。
歯があることで噛むことができます。
同時に舌が正しく動くかも重要。
歯の上に食べ物を乗せてちゃんと噛めるようにするのは
「舌・頬・唇」も機能していること。
→「歯・舌・頬・唇」が機能していなければ
この先のステップには進めません。
食塊にすることができないのであれば
最初から食事形態をミキサー食などにします。

(3)口腔期
舌を複雑に動かして食塊を喉の方へと送り込みます。
同時に上顎の奥、軟口蓋が動き
鼻の方へ食物が流れるのを防ぎます。
→鼻から内視鏡を入れて食事を観察すると
食べ物の一部が鼻に入り込んでくる人もいます。
(誰でも食事中にむせたりして鼻からご飯が出たりすると
痛みを感じます。それが頻繁に起こるようであれば
食事をすることも拒否したくなってしまう人もいます)
瞬間的な窒息やそれに伴う血圧上昇にも注意が必要です。

(4)咽頭期
食塊が気管に入り込むのを防ぎつつ食道へ送り込みます。
この時のフタになるのが喉頭蓋。
このしまりが悪いと食塊が気道へと入る誤嚥が起こります。
→窒息や肺炎を起こすことで有名な誤嚥。
咳反射などで吐き出すことができればまだよいのですが
そのまま入り込んでいると高熱もおこし大変危険です。
また、このタイミングは0.6秒の出来事です。
それよりも速い「水」や
それよりも遅い「食塊にならずバラバラと落ちてくる食物」
などは誤嚥しやすい。
そういうタイミングを調整するのが「とろみ付け」です。

(5)食道期
上食道括約筋が収縮して食道を閉鎖し喉頭への逆流を防ぎつつ
胃に食塊を送り込みます。
→繰り返す胃酸逆流は食道を荒らすだけでなく、歯も溶かします。

ここまでが嚥下の流れで、
そして胃から腸へ消化吸収され排出する
というのが今後の一連の流れです。

動画検索で見てくれた方は、この流れの
一瞬で終わる複雑さが
おわかりいただけたでしょう。
0.6秒とはいえ息を止めて行う動作です。
人体の構造的な真剣さの極みですね。

また「胃ろう」にしたからと言って
誤嚥しないわけではありません。
口の中の雑菌などでも誤嚥し肺に入れば
肺炎を起こします。

生きるための栄養補給ルート(嚥下)は
当たり前のように毎日考えることなく
機能しているのが当然ですが、
いざそれが難しい状況になったら
即、生命維持にかかわる問題です。

解剖学の話になりますが
口腔期〜咽頭期にかけて
舌が挙上することで舌骨が上前方に引っ張られ、
つながっている喉頭蓋が気管に通じるルートをふさぎ、
食物が(肺ではなく)食道に流れるようにします。
そこには「歯」も関係します。
試しに唾液をゴクッと飲み込んでみてください。
上下の歯が噛み合う状態と、離れている状態で。
噛み合っているほうがしっかり飲み込めると思います。
それだけ舌の嚥下の動きには噛み合うことが大切です。
楽に飲み込むためにも歯は必要です。

歯があって正しく噛み合うことができると
下顎骨の位置が安定します。
嚥下には舌骨という骨も大きく関与します。

舌骨と下顎骨の関係は
4種の舌骨上筋群でつながっています。
口を開けるときは、舌骨を支点にして下顎骨を下方に動かします。
嚥下するときは、下顎骨を支点にして舌骨を前上方に動かします。
それに連動して喉頭蓋が閉まります。
歯があることで舌骨を無理なく動かし
誤嚥しないように喉頭蓋がちゃんと動くわけです。
歯が残っていても、すり減った歯、ずれた歯、腫れた歯ぐき、
顎関節症もあったりすると、噛み合う角度も曲がります。
舌骨を引っ張り上げる筋肉も左右対称にはなりませんから
引っ張られる喉頭蓋も歪に動き
誤嚥しやすくなるわけです。

さらに舌骨は下方で
甲状軟骨・胸骨・肩甲骨などとも筋肉でつながっています。
たとえば
姿勢・猫背などでキーワードとなる肩甲骨の習慣的位置異常が
舌骨の動きを阻害して、誤嚥リスクを高めることにもつながります。

両肩を上げ、耳より前に来るよう突き出しつつ、
背中から丸めた猫背の姿勢をとり
上下の歯を当て噛み合ったまま、唾液をゴックンと
飲んでみればわかりますよね。
飲み込みにくいし、人によってはノドが痛い感じすらします。

だから歯の状態や姿勢も嚥下に関係する要因です。

誤嚥もけして、イコール老化ではないわけです。
積もり積もった悪い体が、
別部位も動けなくすることで起こったある意味、
習慣性症状というものもかなり多い実情があります。

虫歯で歯が折れ尖った根っこだけのもの、
衛生のできないインプラント、
歯も入れ歯もないままで過ごされた方、
介護が必要になったときには
それらにたまった細菌が
誤嚥や肺炎の原因ともなります。

かといって、
意思疎通ができない、
口が開いてられない、
舌の動きが止まらない、
などがあればあるほどできる処置は限られ、
状態においては何もできないことも。
それが不健康寿命10年で起こっている
歯科的な問題です。

オーラルフレイルのその先の話ですが、
そうさせない!
少しでもそうなることを遅らせる!
不健康寿命なんてなくす!
ことを真剣に考えたとき、
オーラルフレイルに気づく、
オーラルフレイルで食い止め治す、
ことがどれほどの意味を持つかがわかります。

まぁ、医療サイドの意見で終わっちゃいけないことなんですが
自分の身に降りかかったときは、
そう判断する機能も低下しているでしょう。
介護する家族や施設職員が実感するとしても、
悪化した状態が
口内環境を改善することで「改善されて」初めて
大事だったんだと気付くかもしれません。

治せる状態のときには実感がわかないかもしれませんが、
先を見据えられる人は今から気を付けましょう。



カラフルあっぷるいーと3.JPG




posted by あっぷるいーと いんちょう at 17:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 全身に関わる歯科の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする